山本昌男 : Fujisan

昨日の続き。どんな本か。小さく薄い本で、十点の写真。九点が「reproductions」で一点が「original photograph」。タイトルの通りなのだが、三つは富士山みたいな形をした別のものである。山そのもの(或はその代りのもの)の見え方はいたつて普通で、つまり、あの形である。馴染みのものが、著者の写真の作り方にはまつてゐるのである。
何しろ富士山だから、どうしても新鮮みは薄い。よく知つたものが違つて見える、といふより、違つたものもよく知つたものに見える、といふ作品である。外人向の趣向なのか、と少し思つたが、さういふことはしないはずだ。山本さんの今までの作品のなかにも「富士山」はいくつもある。よく見ると、それとはすぐに分らないやうに紛れてゐるの発見する。この人の好きな形なのである。すでに薄々、察してゐたことについて、種明しをされたやうな気分もした。