假名遣ひについてよくある誤解

平成山人の評論隨筆(自己紹介)より

今一つの拘りは日本語の傳統表記。 親しい友人らからは、「お前のパソコンは江戸時代製か」 とか、「平賀源内が作つたワープロソフトを使つてゐるのか」 なんぞと突つ込みも入るが、(後略)

かういふ反應は珍しくない。平成山人さんは眞珠灣攻撃の半年前の生れださうで御友人もそれに近いか。それでそんなものかと言ふと、そんなものなのである。ちなみに、たとへ昭和一桁生れだつて何を言ひ出すか分つたものではない。私は昭和三年生れの父に、お前の書き方は變だと詰られたことがある。さう言ふ父の書き方は「現代假名遣」にも據つてゐなかつた。
それはともかく、新潮文庫岩波文庫が、何より學校で使はれる國語教科書が、假名遣ひを「現代仮名遣い」に書き換へてしまつてゐるのだから、正しい假名遣ひを見て「江戸時代か」は普通の反應なのである。知らず知らずのうちに鴎外や芥川の本さへも最初からさうやつて出されてゐたと錯覺させられてゐるのである。
私が高校一年のときに使つた古文の教科書には、最初に「古文の特徴は歴史的假名遣ひで書かれてゐることである」とあつた。古文なら何でも歴史的假名遣ひで書かれたといふわけではないし、古文でない文だつていくらでも歴史的假名遣ひで書かれてゐる。「特徴」だなんて言へるのか。
執筆者は文部省の差し金で意圖的に嘘をついたのか。いや、專門家さへも、子供相手で氣が緩めば(?)、うつかりこんなことを書いてしまふくらゐに強力な錯覺なのだらう。