Obvious & Ordinary : America 2006 (Rocket Gallery, 2007)

Martin Parr と John Gossage の共著。しかし、手に入れてみると、著者の名がない。発行元もなにもない。表紙にタイトルはある。OBVIOUS & ORDINARY / AMERICA 2006 と二行で刷られてゐる。あとは、文といへば表紙を開いたところに発行部数(アメリカと欧州でそれぞれ750部)と印刷した国(シナ)だけである。カラーと白黒が混じつてゐて、カラーがパーで、白黒がゴセジであることは分る。たとへそれと知らなくても撮るもの、撮り方がいかにもさうだからである。

あらためて、よくよく本屋のウェブサイト(いくつかある)を見ると、Obvious & Ordinary が著者名なのだつた。タイトルを修飾しつつ、この本限りの偽名なのである。どうしてかういふことをするのかよく分らないが、不満もない。なにか面白がつてゐるのだらう。
メンフィスへ自動車で旅した道々で撮られてゐる。それはアメリカへ行つたことがない私でも察しがつく。終りのはうになるとプレスリーの顔が出てくるからである。もちろん観光写真ではないが、写真家なのだから写真を撮るための旅かといふと、版元が販売店を通して出してゐる売り文句に「William Egglestonに会ひに行くため」とあるのである。そんなこと本からは分らないし、この本をみる上で知つてゐなくてはならないのか。
エグルストンに会ひに行くといふ話は、後藤繁雄の『写真という名の幸せな仕事』といふ本に出てくる。家にあげてもらつて、インタヴューをしてゐる。有名で、人気のある巨匠なわけだが、どうもさういふ対象になる人らしい。